農業共済新聞記事バックナンバー

「季節を楽しむ旬の花~人生に彩りを~」

生活を豊かにするものの一つに挙げられる花。切り花や鉢花は、季節を感じ、プレゼントや装飾などに想いを表現するものとして彩りを添えている。丹精込めて栽培し、「令和6年度宮城県花き品評会」で受賞した中から3人を紹介する。

「丁寧な観察を基本に」

【名取市】名取市小塚原の太田伸也さん(46)は、母の美知子さん、妻の麻美さんと、ハウス26㌃(ガラスハウス2棟・鉄骨ハウス3棟・パイプハウス4棟)でカーネーション23品種・4万5千株を栽培する。
 太田さんは会社に勤めていたが、父の病気を機に退職し、これから農業に専念しようとした矢先に東日本大震災でほとんどのハウスが被災した。会社に再度勤めながらハウスの復興支援を受け、2014年の完成後に就農した。
 「子どもの頃は手伝いをしていたが、栽培経験がなく、父も亡くなり、ゼロからのスタートだった。近隣の先輩農家にアドバイスや協力をもらい、何度も助けられた」と振り返る。
 カーネーションは6~7月に苗を定植し、定植後は週1回の消毒と肥料散布が欠かせない。昨年にはハウスの開口部に防虫ネットを設置した。「病気や虫がまん延してからでは手を付けられない。毎日の苗の観察は必須だ」と太田さん。
 「定植から摘芯、脇芽摘み、消毒に収穫や選別と手作業が多く苦労もあるが、市場で高く競り落とされた日はうれしい」と話す。全量を仙台市の市場に出荷するため、購入者の声を聞くことは難しいが、競り人から品質を認めてもらえることが励みだという。
 「就農から10年以上が経過し、作業の慣れも出てきた。今年はもう一度初心に返り、カーネーションと向き合いたい」と意気込む。▽宮城県知事賞・仙台生花株式会社代表取締役賞(本郷沙織)

「対面販売で魅力伝える」

【大崎市】「幅広い年齢の方に花の魅力を伝えたい」と話すのは、大崎市鹿島台の遠山忍さん(51)。パイプハウス11棟(600坪)で花苗約50種を栽培し、市場や直売所に出荷するほか、近隣の幼稚園・小中学校にも提供し、地域に花の魅力を発信している。
  遠山さんは父が園芸店を営んでいたこともあり、24歳で就農。埼玉県の花き農家で研修を2年間受けた後、常緑樹のレッドロビンの生産に取り組み、ガーデニングブームに合わせて花苗生産に切り替えた。「当初は土作りで苦労し、試行錯誤を重ねた」と遠山さん。20年ほど前に新潟県のメーカーの培土を使い始めたところ、水はけや水持ちが良いことから安定した品質の花を栽培できるようになったという。
 「近年は猛暑で栽培が難しくなっている。遮光ネットや寒冷紗を張って対策しているが、夏は栽培量を減らし、仕込む期間に充てている」と話す。
 栽培する品目は、購入者が好みの色などを選びやすいパンジー、ビオラを中心に、季節に合わせて選定している。また、株式会社サカタのタネが育成した中小輪系パンジー「よく咲くスミレ」は高温期でも徒長しにくく、出荷ロスが少ないことが魅力という。「長い期間楽しめるので、寄せ植えや花壇の植栽などに利用するお客さんも多い」と遠山さん。
 「今後はお客さんとの対面販売を増やし、花の魅力を直接伝えていきたい。若い人たちにも花に親しんでもらいたい」と抱負を話す。▽東北農政局長賞(齋藤誠也)

「長く楽しめる花を提供したい」

【石巻市】「ご家庭で長く花を楽しんでほしい」と話すのは、石巻市河南の亀山晴央(はるひさ)さん(48歳、亀山晴花園経営)。鉄骨・パイプハウス15㌃と露地15㌃で、シクラメン40品種のほか、ラベンダーやアジサイなど5品目を季節に合わせて栽培する。鉢花5千鉢を妻とパートの3人で通年栽培し、関東や仙台市の市場、直売所へ出荷している。
  亀山さんは茨城県で生まれ育ち、もともと園芸に興味を持っていたという。茨城県外で就職していたが、「花き栽培を仕事にしたい」と2006年に脱サラし、宮城県へ移住・就農した。
 「シクラメンは、販売までに約1年かかるため気が抜けない。葉組みの作業がとても大事で、出荷前の3カ月間で3回は行っている」と栽培の難しさを話す。株の中心に光が当たるよう葉を組み替える作業は手間がかかるが、茎が太く強くなり、株が締まって草姿が整うため、長く花を楽しめる。「お客さまから『亀山さんのシクラメンは6月まで楽しめた』と言われることがうれしい」と笑顔を見せる。
 花き栽培で一般的に使用される開花促進のホルモン剤を使わず、1鉢ずつ手作業で水やりしながら調整を行うことで、花が本来持っている力を引き出すように心がけているという亀山さん。「昨年の猛暑の中でも、水やりに毎朝4時間かけた」と振り返る。
 「物価高騰や世界情勢で生活は変化していくが、周りの状況に振り回されず品質を維持していきたい」と話している。▽仙台中央卸売市場花卉仲卸協同組合理事長賞(伊藤恵利香)

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