農業共済新聞記事バックナンバー

「農業と地域を守り続ける」

【栗原市】栗原市築館の住民有志でつくる「富野地域づくり協議会」では、古代米の栽培体験の場を地区の子どもたちに提供している。会長を務める齋藤義憲さん(82)は「食農教育として農業体験はとても大事なこと」と話し、農業と地域を守り続けるため、農業体験を次代に継承することに尽力する。

 今年で10回目を迎える稲作体験は、富野地区で農業を営む千葉顕太郎さん(29歳、水稲15・6㌶、大豆4・2㌶)の圃場で、赤米と黒米の苗を手植えする行事から始まった。千葉さんは子を持つ親として「地域の子どもたちに農業へ関心を持ってもらいたい」と、同協議会の思いに賛同したという。
 30人を超える親子連れなどが参加。子どもたちは素足で田んぼに入り、会員から指導を受けながら、機械を使用しない昔ながらの手植えを体験した。
 齋藤さんは教員を退職後、2016年に同協議会の設立に携わり、ふるさとの歴史や文化を生かした地域づくりを目的として活動している。その一環として、閉校した小学校の行事だった農業体験を引き継ぎ、古代米作りが始まった。
 「昔は農作業の多くがコミュニケーションの場だった。小学校の統合などもあり、地域の農業に触れ合う機会も失われている」と齋藤さんは懸念する。
 しかし参加者から、「今度は農機具を操縦してみたい」という声や、参加の経験がある人から「農業体験が進路の決定に生きた」という声を聞く機会があり、やる気がみなぎるという。
 9月下旬には稲刈り体験を行う予定で、石包丁を使って作業する。齋藤さんは「気づいていないだけで、地元には宝物のような歴史や文化がたくさんある。体験を通して、農業に関心を持つ子やふるさとの魅力を語り継げる人を増やしていきたい」と意気込む。(尾崎良介)

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