農業共済新聞記事バックナンバー

「初期費用を抑制・乾燥調製施設を離農農家から借り受け」

【栗原市】栗原市志波姫の株式会社一粒喜(いっき)では、高齢などで離農する農家から施設や農機具を借り受けることで初期設備投資を抑え、法人を設立。水稲作付け1年目となる今年は28㌶を集積し、作付けを行った。地域の農家に支えられながら、4人で協力し合い実りの秋を迎えた。

「離農した人も農地が荒れていくことを望んでいない。何とかしてあげたかった」と話すのは代表取締役の三浦健一郎さん(49)。仲の良い高齢農家から「どこの農業法人でも、容量超過のために水稲の受託を断られてしまう。独立して請け負ってくれれば」と話されたことがきっかけで、親交のあった取締役専務の笠原崇浩さん(43)とともに法人設立を決意。菅原淳(あつし)さん(43)、小野寺将寿さん(26)の4人で事業を開始した。
 同社へ乾燥調製施設を貸す鹿野順子さん(74)も農地を委託する一人。「自分も農地を受託して営農をしていたが限界を感じていた」と話す。
 地主へ農地を返還しても次の委託先を探さなければならないため、若手の農業者へ引き継ぐことで長期間受託してもらい、地主の負担軽減を考えていたという。すべての農地を引き受けてくれたこともあり、施設を自由に使って良いと鹿野さんから申し出た。
 「稲作はトラクターとコンバインがあればできるわけじゃないから」と鹿野さん。「息子や孫みたいな子たちが一生懸命に、楽しそうに営農に向き合う姿が頼もしい」と見守る。三浦さんは「ゼロからのスタートだったため、施設を借りることができなければ今の規模を請け負うことはできなかった」と振り返る。
 収穫作業が落ち着いたころに地主を招き、受託農地で収穫した米でおにぎりなどを振る舞う収穫祭の開催を計画している。「規模拡大とドローン(小型無人機)などの機器導入で効率化を進め、新品種の作付けや食味を追求して稲作へ挑戦したい」と三浦さんは意気込む。(佐々木貞美)

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