農業共済新聞記事バックナンバー
「産地を守り続けるために」
【利府町】「技術の継承が産地を守っていくことにつながる」と話す利府町春日の引地龍夫さん(73)は、ナシを栽培して50年になる。利府地区梨部会の依頼で、剪定講習会などで自身の経験をもとに講師を務めるほか、園地造りや栽培技術の継承に尽力する。
園地40㌃で「幸水」「豊水」「あきづき」などを主力に栽培する龍夫さんは、昨年4月に息子の信之さん(49)が就農したことを機に、園地の増設に着手した。
地域のナシ農家でも後継者がいるが、ほとんどが親から継承しているため園地を一から造ることがない。龍夫さんは「ナシ棚、防鳥網棚の設置技術を持っている人は町内でも自分を含め約3人で、ナシ栽培における技術の継承が重要」と話す。
そこで今年3月15日に、利府地区梨部会を通じて若手農家向けのナシ園の棚設置のノウハウを伝える講習会を開き、龍夫さん含め3人が講師を務めた。参加したのは町内の若手農家10人で、ナシ棚や防鳥網棚の設置方法を学んだ。支柱の立て方やワイヤの張り具合の調整などを説明し、「若手農家にとっては初めての経験で苦労している様子だった」と龍夫さん。参加者からは「初めての作業で勉強になった」などの声があった。
龍夫さんは「自分も若いころ、新植の園地造りについて周りに聞いた。しかし親から引き継いだ人が多く、苗木育成について分かる経験者がいなくて苦労した」と当時を振り返る。
さらに「ナシは苗木を植えてから成木になるまで20年と言われているが、約14、5年で成木並みの収穫量が可能な育成技術も今後は伝えていきたい」と龍夫さんは話す。
信之さんは「勉強することはまだまだたくさんあるが、今回の講習などで『利府梨』を栽培する後継者全体の技術が高まった。高品質なナシを生産して利府梨の産地を守っていきたい」と将来を見据える。(櫻井孝雄)