農業共済新聞記事バックナンバー
「商品で『幸』を届けたい」
【加美町】「今までお世話になった人たちに感謝し、出会う人とのつながりを大切にしていきたい」と話す、加美町小野田の「吉祥園」代表・松本祥(まつもとしょう)さん(40)。妻の結依(ゆい)さん(37)と二人で多肉植物とブドウを栽培し、4年目になる。ブドウは産直で、多肉植物は県内や隣県で開催されるイベントや産直などで販売し、「育てる楽しさや幸せを届けたい」と取り組む。
祥さんは、JICA(国際協力機構)の青年海外協力隊としてウガンダで活動し、その後、岩沼市の復興支援などの仕事を経て、実家に戻り就農した。現在は、ハウス3・3㌃で多肉植物を、ハウス14㌃で「シャインマスカット」をメインに「ピオーネ」「藤稔(ふじみのり)」などのブドウ7品種を栽培する。
「多肉植物が好きで、海外協力隊時代にお世話になったアフリカに関連するものを育てたいと思い、栽培を始めた」と祥さん。「ブドウと多肉植物は繁忙期が重ならないので、複合経営に向いていると考えた」と結依さんは話す。
多肉植物は「ユーフォルビア」「セダム」など多品種を栽培。株の形を整え、水分や日光、温度の調整をこまめに行う。水やりは週1回程度だが、夏冬は休眠する品種もあるため、根腐れを起こさないよう注意する。「原産国の環境に近いと色合いが良くなるので、寒暖差を利用してストレスを与え、あえて過酷な環境にしている」と祥さんは話す。
県内で多肉植物を本格的に栽培している農家が少なく、情報交換や技術を学ぶ機会が少ないという。「ほぼ独学で本やインターネットの知識で栽培し、失敗や試行錯誤の経験を繰り返してきた」と結依さんは振り返る。
「今後はブドウの品種や面積を増やしつつ、環境にやさしい栽培を心がけたい。売り上げの一部を発展途上国の支援につなげる取り組みを実現していきたい」と二人は抱負を話す。(鈴木克啓)