農業共済新聞記事バックナンバー

「災害乗り越え夏秋イチゴ」

【栗原市】夏秋イチゴの生産に励む栗原市栗駒の渡邉仁(ひとし)さん(65)、光喜(みつき)さん(30)さん親子は、「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」発生時、同市耕英地区のイチゴ農家で就農に向けて研修中だった。「研修や被災時にお世話になった人たちへ恩返しをしたかった」と夢だった夏秋イチゴを、栗駒の地で実らせている。

諦めない

 東京で自動車メーカーのエンジニアとして働いていた仁さんは、ふるさと宮城での就農を決意し、光喜さんと県の支援制度に申し込んだ。研修は2007年に始まったが、研修半ばに内陸地震が発生。ビニールハウスが壊滅し、イチゴも全滅の被害を受けた。
 2年間の研修後は栗原市外で就農する計画だったが、「生活物資や住居の確保に市役所職員や地域の方に助けていただき、栗駒から出ていくなんてできなかった。用意してもらった環境や縁を大切にしたかった」と栗駒に残ることを決めた。
 独立してハウス建設に着手したとき、東日本大震災に見舞われた。
 ハウスは一部の損傷で済んだが、移動式ベンチが故障し利用不可に。「内陸地震で遅れたスケジュールをさらに遅らせることはできなかった」と光喜さん。9月に苗を導入し営農をスタートさせた。
 現在は、ハウス9㌃で四季なりの「サマールビー」「アスカルビー」を高設栽培する。光喜さんは「切ったときの赤と白のコントラストにほれ込んだ。甘さに加えてうま味・食味・酸味が揃うのが魅力」と話す。

コスト減に努力

 3月に3千株を定植し、7月から9月に収穫期を迎える。ハウスは2重構造になっており、層と層の間に風を送り、夏場の熱さ対策としている。通年の需要に対応できるホテルなどに販路を広げ「価格を抑えるため生産コスト削減に努めている」と仁さん。ポリ資材を活用したオリジナルの高設ベンチを採用するなどアイデアを生かす。
 「今後は6次産業化に積極的に取り組み、規格外のイチゴを商品化して生産性を高めたい。一粒一粒、丹精込めて育てているので無駄にしたくない」と仁さんはいい、光喜さんは「収量に波があるので安定生産を目指す」と話す。

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