農業共済新聞記事バックナンバー

「品質の均一化図る」三本木グリーンサービス

【大崎市三本木】「収穫期のデータが、来年の作付けに生かされる。ITの活用で、品質の均一化を図っていきたい」と話す、大崎市三本木の株式会社「三本木グリーンサービス」渋谷誠司代表取締役(48)。2004(平成16)年から5年間、栽培データや作業記録を管理し、集約した情報を生産工程に生かす、農研機構・生物系特定産業技術研究支援センターの「精密農業」構築に向けた実証実験に協力。これをきっかけに19(平成31)年産から本格的にITを活用した農業生産に取り組む。

三本木グリーンサービスは2007(平成19)年1月に設立。役員3人と従業員3人で水稲48ヘクタール、大豆32ヘクタールを作付けする。

農研機構の実証実験は、パソコンと携帯端末を組み合わせ、一筆ごとに面積や土質、施肥料や作業内容、収量などの情報を入力し、管理していく。まず、作物生育情報測定装置で苗葉面の光の反射率を計測し、幼穂形成期を解析して追肥時期、穂肥量を決定する。

施肥作業では、可変施肥機を使用。生育ステージごとに施肥量を変えられ、決定した施肥量に従い、不足分を追肥や穂肥などで補う。施肥量の20%削減に成功し低コスト化につながった。

収穫時には圃場ごとに水分や籾重量を計測するコンバインを使用し、蓄積したデータは、次年度の栽培に生かされている。

「データは宝物。実験期間中のデータが今の経営に役立っていて効果を実感する。先人の経験や知恵に頼っていた部分を情報化し共有できることで、高品質で均一な農産物の生産に結びつく。大規模化にも有効な技術だ」と渋谷代表。18(平成30)年には「全国優良経営体全国担い手育成総合支援協議会長賞(生産技術革新部門)」を受賞。農業経営改善の試みが評価された。

今年の秋には、刈取りしながら圃場ごとに収量やタンパク質、水分量、食味値が計測できるコンバインを新たに導入する。

また、農機具メーカーで提供するクラウドシステムを導入予定。パソコンやスマートフォンで、圃場管理や作業記録、コンバインからのデータなどを一元管理し、従業員全員で共有、効率化を図っていく。

経営では、税理士と毎月収支相談を行って過剰な投資を防ぎ、節税などのアドバイスを受ける。

大崎農業改良普及センター地域農業班佐藤敏昭技術次長は「スマート農業の先駆者として地域農業をリードしてほしい」と期待を寄せる。渋谷代表は「IT化を進めながら、後継者の育成に努め、地域農業を守りたい」と抱負を話す。

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