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直播栽培の新技術「べんがらモリブデンコーティング」低コスト、省力性に注目

大崎市鹿島台 髙橋俊夫さん

【大崎市鹿島台】「安定的に収量を確保できるよう、技術を習得したい」と話す、大崎市鹿島台の髙橋俊夫さん(65)。県が普及を図る新技術「べんがらモリブデンコーティング(べんモリ)」種子を用いた水稲直播栽培の実証試験に名乗りを上げ水田60アールで導入、本格実施に向け意欲を見せる。

髙橋さんは、米価低迷の中でコストを抑えた農業経営を確立させようと、4年前から鉄コーティング種子を使った水稲直播栽培を開始。現在、水稲9・9ヘクタール作付けするうち1・6ヘクタールで鉄コーティングを取り入れるほか、新技術のべんモリを試験的に60アール手掛ける。
県古川農業試験場の菅野博英主任研究員らは、播種前の種子には浸漬または催芽もみを使用し、適度に湿らせてコーティングマシンやミキサーでべんモリ資材を回転させながら被覆するよう指導。被覆後は乾燥条件によってカビの発生が懸念され、保存性も悪いことから、風通しを良くして乾燥させることを注意点にあげる。
髙橋さんは、温湯消毒後催芽し、播種する当日の午前中に1日の播種面積分をコーティング。播種量は10アール当たり3キロで、風通しのよいところに広げて乾燥させ、午後からの播種。「これまでの鉄コーティングでは、完成まで3日から7日かかり場所や時間を考えて委託していた。べんモリは手間が掛からず、自分で簡単にできる」と手応えを得る。
圃場でも、菅野主任研究員らの指導のもと、土の硬さや均平性、排水性に気を配り、代かきを播種4日前に実施。練り過ぎず、均平整地作業を丁寧にし、前日には落水する。専用播種機に溝切りや覆土するための部品を付けて播種するが、髙橋さんは溝切りを播種機に設置。鳥害に遭いやすいことが懸念材料に上がっているため、深さ0.5~1センチに土中播種した。播種と同時に粒剤の肥料と除草剤を施して湛水すると、除草剤の効き目を確認して5日間で落水。髙橋さんは「苗立ちを確保させ雑草を抑えるためには、田んぼを平らにすることがとても重要。水管理とともに気を使った」と話す。
べんモリは、従来法より苗立ちが安定し、土中播種で活着が良く倒伏しにくいといわれ、多収が期待できる。髙橋さんは、「まくら部分は均平を保つのが難しく、苗立ちが悪かったが、それ以外は出芽率も良く、倒伏にも耐えられる根の張りに期待している。今後は直播栽培面積が3ヘクタール以上になるように直播をすべてべんモリにしたい」と話す。

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