農業共済新聞記事バックナンバー

クワで目指す地域再生 雇用と緑化の両立へ

農事組合法人Champs du murier(仙台市若林区)

【仙台市若林区】東日本大震災の津波浸水農地を復旧する中、仙台市若林区では復興をかけた「復興の桑」プロジェクトが始まっている。中心となる「農事組合法人Champs du murier(シャン・ドゥ・ミュリエ)」は、クワの栽培に取り組み、葉を利用した商品の開発・販売に力を注ぐ。

同法人は、クワの葉を利用した商品開発を目的として2013(平成25)年10月に設立。代表の菊地柳秀さん(72)は、震災によって瓦礫(がれき)が山積みになった農地が少しずつきれいになっていく光景を目にして、「何か作れないか」と思い始めたという。ボランティアの人たちからクワは塩害に強いと教えられ、栽培を決意した。
12(平成24)年5月に畝幅2メートル、株間1メートルの間隔で2本ずつ挿し木をし、苗木100本を試験的に栽培。「初めてで不安が大きかった」と菊地代表は話す。75本が活着し、10月に収穫できた。その翌年から本格的に手掛け、現在では60アールに4000本を栽培している。
一度根付けば、その後の管理は比較的簡単で、3月の剪定(せんてい)、堆肥や鶏ふんなど有機肥料の散布、収穫前の草刈りなどを行う。虫はほとんどつかず、病気もないため、農薬を使わないで済むという。菊地代表は「高齢者の仕事に合っているかもしれない」と話す。
収穫には地域の女性を雇用し、7、8月と10月に枝ごと伐採。葉の加工は、収穫後4時間以内に行わないと品質が低下するため、午前中に収穫するとすぐに県北の加工施設に運んで乾燥粉末にしている。
粉末は桑茶として市内の直売所やインターネットで販売。血糖値の上昇を抑える成分の他に、カルシウムや鉄分などのミネラル、食物繊維やポリフェノールも多く、体に良いとされる栄養素が含まれて平安時代からお茶として飲まれている。
苦味や癖がなく、抹茶に似ている。水や湯に溶いて飲む他、ヨーグルトやアイスクリームなどの乳製品との相性も良い。販売先の拡張を考えている菊地代表は「食事に桑茶を加えることで、健康寿命を長くしてもらえたら」と話す。
市内の複数のレストランや菓子店と協力した商品も開発。パウダーを練り込んだ生チョコは、昨年に続き今年もバレンタインチョコとして好評を得ていた。菊地代表は「農業離れが多く、耕作放棄地が増えてきているので、クワで緑を取り戻したい」と熱意をもって取り組んでいる。
▽問い合わせ=シャン・ドゥ・ミュリエ(仙台市若林区荒井字笹屋敷165の1、TEL022・288・5684)

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