農業共済新聞記事バックナンバー

有害鳥獣解体場が稼働 駆除を後押し

【白石市】弥治郎こけしで有名な白石市弥治郎地区に昨年12月、有害鳥獣の解体場が完成した。急増するイノシシの対策として、解体・処分作業の効率化が期待される。

解体場は旧白石衛生センター敷地内に建設され、72平方メートルの木造平屋建て。県内では、昨年4月に稼働した蔵王町に続くものとなる。白石市が管理・運営し、白石市鳥獣被害対策実施隊の隊員が解体を行う。
施設内には、天井からつるす移動式のフックと、解体したイノシシを一時保存する冷凍庫がある。解体時は10キロ程度に小分けし、一定量たまったら角田衛生センターへ運搬、焼却する。解体作業をした白石市在住の角田訓(つのださとし)さん(70)は「室内にエアコンや掃除用の高圧洗浄機などがあるので便利だ」と話す。
建設の背景には、イノシシを処分する能力が限界に達したことが挙げられる。通常、イノシシは埋設処分がされてきた。しかし、他の野生動物に掘り起こされないよう深く穴を掘る必要があり重労働。また、捕獲頭数が急増して埋設場所の確保が困難になった。新たな選択肢として、イノシシを解体し、焼却する方法が生まれた。
県内では近年、イノシシの生息数が増加するとともに、活動範囲が広域化している。狩猟者の高齢化に加え、東日本大震災の影響で食用にできないため、狩猟を控えていることが要因の一つだ。白石市のイノシシ捕獲頭数は、2012(平成24)年度の85頭程度に対し、14年度は834頭と10倍ほどに増加している。
捕獲頭数の増加に併せて被害額も増加。田畑への侵入や食害、畦畔(けいはん)崩しや庭の掘り起こし、自動車との接触事故などで、地域住民は対策に苦労している。昨年度のNOSAI県南支所管内では、水稲の被害筆数の7割はイノシシによるもので、支払共済金もイノシシ害だけで2800万円となり、農家への被害は甚大だ。
解体場ができたことで、作業の効率化や労力軽減が見込まれる。白石市産業部農林課の佐藤広和さん(24)は「稼働し始めて2カ月なので、利用率はまだ低い。使い方などを説明して役立ててもらえるようにしたい」と話す。

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