農業共済新聞記事バックナンバー

「生食用は樹上完熟」

【山元町】2011年に加工用イチジクの栽培を始めた山元町の山内啓二(やまうちけいじ)さん(66)。15年には「やまうち農園」を立ち上げ、娘の理恵(りえ)さん(42)、裕貴(ゆうき)さん(42)夫妻と共に、生食イチジクの栽培や、イチジクの加工品開発に注力する。

生食イチジクの栽培から5年、啓二さんは「町内の生産者が3戸に増え、少しずつ普及を実感している」と話す。テレビ出演も増えたといい、今年は4回。生食イチジクの注文は絶えなかった。
 「生食用は樹上完熟させて出荷するので、数や出荷時期を約束できない。出荷数の10倍の注文をお断りすることになり心苦しかった」と理恵さん。8月から11月上旬のイチジクの収穫期を終え、忙しかった1年を振り返る。
 収穫は主に啓二さんと裕貴さんが行い、今年の収穫量は生食用1㌧、加工用6㌧。加工は理恵さんを中心に、イチジクのグラッセやセミドライフルーツ、洋菓子を用意する。
 グラッセは砂糖を控えめにして、県内で馴染みのある甘露煮と差別化する。イチジクを丸ごと使用し高級感のある包装が県内の評判を得ると共に、「宮城県産」を売り出すことで首都圏の支持も獲得し販路を広げた。
 理恵さんは「グラッセやセミドライフルーツは、引き出物などに使われていたのでコロナの影響を大きく受けた。これからは、焼き菓子のような手に取りやすい商品を作りたい」と新たな構想を練る。
 「売れ残りを気にして、イチジクの値段を下げるようなことはせず、加工にする。加工が経営の強みになっている」と啓二さん。「注文数に応えられるようイチジクの面積を増やしていきたい」と笑顔で話す。

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