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「循環型農業を確立」

【登米市】登米市中田町の有限会社エヌ・オー・エー(N・O・A、髙橋良代表取締役=71歳、社員7人)は、耕種部門として水稲、麦、大豆など123㌶を栽培し、畜産部門として繁殖牛120頭を飼養。粗飼料のほぼ全量を自給しながらふん尿堆肥を圃場に還元する資源循環型農業を確立している。この経営が高く評価され、「第52回日本農業賞」(NHK、JA全中、JA都道府県中央会主催)の個別経営の部で大賞を受賞した。

2000年に法人化した同社の社名は「中田オーガニックアグリカルチャー」の頭文字をとった。化学肥料や農薬を減らした環境保全型農業には1994年から取り組み、耕畜連携による有機農業を実践する。
 立ち上げた当時の栽培面積は35㌶ほどだったが、地域内で離農する農家が増え、「農作業の受け手としての役割が増していった」と髙橋代表は振り返る。「耕作面積が増えれば、そこに入れる堆肥が必要になる。一方で畜産部門で使える稲わらが増える。2008年には畜舎を増設し、頭数は約3培になった」
 耕種部門と畜産部門をバランス良く規模拡大したことで、粗飼料自給率はほぼ100%だ。
 この経営規模を維持するため、労働負担軽減にも努めている。耕種では衛生利用測位システム(GPS)を活用した栽培技術を導入。「耕種用12台のトラクターの半数は自動操舵(そうだ)を装備。これに水稲乾田直播を組み合わせることで低コスト農業と労働時間削減が実現できた」という。
 さらに作業目的ごとに対応する農機具を複数台所有する。「例えば台風が来る前にと急ぐような場合にも対応できるし、そんなときに1台が故障しても安心だ」というリスクマネジメントからだ。
 畜産部門では、牛にセンサーを取り付け、呼吸数などの体調データをはじめ、発情や分娩(ぶんべん)の兆候をスマートフォンで確認できるシステムを活用している。「社員の負担と牛の事故の低減に役立っている」と話す。
 髙橋代表は「規模が大きくなったが、稲わらなどを牛に与え堆肥を圃場に返すというのは、今も昔も同じ。耕種でも連作障害を防ぐように転作地をブロックローテーションしたり、転作地では麦・大豆の輪作体系を取ったりするのも昔と同じやりかた」と、基本となる考え方を省略しないことが強みだという。
 これからについては「経営者としていろいろな責任があると感じている。経営を続けることが重要と考えている」と話し、「万一のため収入保険と農業共済に加入し、家畜共済ではこの規模でもオールリスク補償割合80%を選択している」と持続可能な農業に向けた意欲を話す。(佐藤明)

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