農業共済新聞記事バックナンバー

「守り続ける手作りみそ地域の農産加工を先導」

農業・農村において社会参画や企業などで活躍する女性農業者を育成・支援しようと、県では「宮城県農業・農村女性活躍表彰」を実施。個人やグループなどを表彰し、広く紹介しています。「令和3年度」の最優秀賞を受賞した3人の女性農業者を紹介します。

【大崎市古川】「みそは身近な食材で手作りできる調味料。家庭の味を残すため、子どもたちや若い世代に伝えていきたい」と話す大崎市古川の坂井悦子さん(69)。2012年から「食材王国みやぎ『伝え人(つたえびと)』」として学校や地域の公民館などに出向き、みそ加工体験や講座の開催に力を入れている。
 坂井さん方では夫・美津男さんが水稲12㌶と大豆10㌶を作付け、悦子さんが自家栽培の米や大豆を使用したみそを年間約2500㌔手がけて、直売所や市内の給食センターなどに出荷する。
 みそは1998年、自家用として造るようになった。米価下落などで収入に影響があったことを機に2003年、みそ加工場を立ち上げた。
 米をふかして種菌をつけ、麹(こうじ)室に入れて切り返しながら2日間寝かせる。大豆を蒸したら、出来上がった米麹と塩を合わせてつぶし、8~10カ月熟成。「熟成期間は、夏と冬を経験させることで発酵が落ち着き、より深みのあるおいしいみそが出来上がる」と悦子さん。
 このような食や農への理解を深める活動に大きく貢献した功績が評価され受賞につながった。「受賞したときはびっくりして驚いたが、うれしかったしありがたかった。一度買ってくれた方の多くはリピートしてくれるのでうれしい」と話す。
 「今後は大崎地域にある地場産の伝統野菜などを使った加工に挑戦したい。地元にもこんな食材があるということを伝えていきたい」と思いを話す。(髙橋千)

【仙台市】「自宅が津波で被災し、気持ちがふさぎ込んでいる地域の女性たちの姿を見て、活躍できる雇用の場をつくりたいと思った」と話すのは、仙台市の佐々木千賀子さん(69)。農事組合法人仙台イーストカントリー(佐々木均代表)の加工・レストラン部門の代表を務める。
 以前、地域の女性たちで「神屋敷仕込み味噌(みそ)クラブ」を立ち上げ、仕込みを行ったみそを岩蔵で醸造し販売していた。東日本大震災で岩蔵が被災してしまったため、夫の均さんやクラブの女性たちのサポートで2013年に農家レストラン「おにぎり茶屋ちかちゃん」を開業した。
 仙台イーストカントリーが生産した米や大豆を使ったみそをはじめ、餅やおにぎり、総菜を製造・提供している。
 心がけてきたのは女性が働きやすい職場づくりで、子育てと仕事の両立を目指してきた。また、新商品の開発にはメンバーの意見を積極的に取り入れるなど仕事への意欲を喚起し、楽しく働ける環境を構築してきた。その結果、これまで離職者を一人も出していない。
 表彰を受け千賀子さんは「法人としては天皇杯などの受賞歴はあったが、私自身が表彰されるのは初めて。受賞できたのはみなさまのおかげだと感謝している。これからもメンバー全員が笑顔で働けるように努めたい」と話す。(鈴木大)

【東松島市】「食育活動を通し、子どもたちに食の大切さや地域の文化を伝えていければ」と話すのは、東松島市牛網の石森さと子さん(59)。県や市の機関の委員などを務めるほか、地元JAの女性部に所属し、食育活動に取り組んでいる。
 東松島市は東日本大震災の大津波で多くの家が被災。その影響は今もまだ残る。さと子さんは子どもたちや地域住民の関わりが希薄になりつつあったとき、地元の小学校からの要望を受け、地域の仲間とともに食農体験や調理実習を行うようになった。
 鳴瀬地域の特産であるソバを題材に、栽培、粉ひき、そば打ち、みんなで一緒に食べるまでの体験を、小学6年生を対象に毎年行う。また、地元産の米、ノリ、キュウリを使用したのり巻きも併せて作る。
 食育活動は、地域で生産された農産物の魅力を伝えるとともに、作物を育てる事の喜びや食と命の大切さを学ぶ場になっている。
 「そばやのり巻きが苦手だった子どもも、自分で作ると喜んで食べる」とさと子さん。体験を通し、地域の人たちと子どもたちの交流が増えるきっかけにもなっている。
 今回の表彰では地域子育て活動に大きく貢献した功績が評価された。これまでも多方面でさまざまな活動が評価されており、「今後も地域や学校、関係機関などの多様な連携により地域ぐるみで食育を推進し、人と人とのつながりを深めていきたい」と意欲的に話す。(畠山陽)

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