農業共済新聞記事バックナンバー
「未来に残したい米麹味噌・震災を乗り越えて『生きる力に』」
【南三陸町】南三陸町歌津の「石泉(いしずみ)ふれあい味噌(みそ)工房(メンバー5人)」は、米麹(こめこうじ)の配合を高めた甘みが強い味噌を年間約3・9㌧製造・販売する。2011年の東日本大震災による津波で加工場が全壊したが、工房存続の機運が高まり翌年4月には再建した。「この味じゃなきゃ」の声が、守り抜く原動力となっている。
同工房は、昔から同町歌津地区で各家庭に伝わるたる仕込み味噌を商品化し、「手作りかあちゃん麹味噌」の名で同町内のスーパーや気仙沼農産物直売所「菜果好(なかよし)」で販売する。
米麹にする米の量は、大豆13㌔に対して15㌔と多く使うほか、大豆は甘みの強い「ミヤギシロメ」を使用。食材が醸す甘さと深い味わいを大事にしている。
「米麹は地元産『ひとめぼれ』から造る。大豆1斗に米1斗の割合は多めだと思う」とメンバーの小野つい子さん(75)。「大豆も厳選した宮城県産で、中でもミヤギシロメは肌が白くきれいな味噌になる」と話す。
メンバーらはもともと、JA南三陸歌津支店の味噌部門加工場で活動していたが、震災による巨大津波で壊滅。加工場は再建しないという取り決めの中、地元住民から「おらい(わが家)の味噌が無くなる」との声が上がった。「造り継いできた味噌を自分たちの手で残したかった」と小野さん。被災地支援を行っていた公益社団法人アジア協会アジア友の会と県本吉農業改良普及センターの協力を得て、12年4月に現工房が立ち上がった。
味噌は毎年1月から6月にかけて週1回の頻度で仕込み、たるで10カ月から1年ほど寝かせる。「仕込みは重労働だが、納品を催促する連絡が励みだ」という。「求められる限りみんなで造り続けていきたい」と話す。(熊谷隆弘)

